楽天モバイル、プラチナバンド商用サービス開始 – モバイル通信の新時代へ

 2023年6月27日、楽天モバイルが700MHz帯の「プラチナバンド」の商用サービスを開始しました。この出来事は、日本のモバイル通信市場に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。本記事では、プラチナバンドの重要性、楽天モバイルの戦略、そしてこの動きが消費者や業界全体に与える影響について詳しく見ていきましょう。

プラチナバンドとは何か

 プラチナバンドとは、700MHz〜900MHz帯の周波数帯域を指します。この周波数帯は、電波の伝搬特性が優れており、建物の中まで電波が届きやすく、広いエリアをカバーできるという特徴があります。そのため、通信事業者にとっては「プラチナ」のように価値の高い周波数帯なのです。

 これまで、このプラチナバンドは主に大手キャリア3社(NTTドコモ、au、ソフトバンク)が独占的に使用してきました。楽天モバイルは後発の通信事業者として参入したため、当初はプラチナバンドを持っていませんでした。しかし、2021年の周波数割り当てで楽天モバイルもプラチナバンドの使用権を獲得し、今回ついに商用サービスの提供にこぎ着けたのです。

楽天モバイルのプラチナバンド戦略

 楽天モバイルが今回開始したプラチナバンドのサービスは、同社の通信サービスに大きな変革をもたらすと期待されています。具体的には以下のような効果が見込まれます。

  1. 通信エリアの拡大:
    プラチナバンドの電波は遠くまで届くため、これまで楽天モバイルの電波が届きにくかった郊外や山間部などでも、安定した通信が可能になります。
  2. 屋内での通信品質の向上:
    建物の中まで電波が届きやすいという特性を活かし、オフィスや商業施設、地下街などでの通信品質が大幅に向上します。
  3. 基地局の効率的な展開:
    1つの基地局でカバーできるエリアが広がるため、より少ない基地局数で広範囲をカバーできるようになります。これは、設備投資コストの削減にもつながります。

 楽天モバイルは、このプラチナバンドを活用して、既存の高周波数帯(3.7GHz帯、28GHz帯)と組み合わせた効率的なネットワーク構築を目指しています。高周波数帯は大容量のデータ通信に適していますが、電波の届く範囲が狭いという特徴があります。プラチナバンドと組み合わせることで、広いエリアをカバーしつつ、必要な場所では高速通信を提供するという、バランスの取れたネットワークの実現が可能になるのです。

プラチナバンド導入の影響

 楽天モバイルがプラチナバンドの商用サービスを開始したことは、単に同社のサービス品質向上にとどまらず、日本のモバイル通信市場全体に大きな影響を与える可能性があります。

  1. 競争の激化:
    楽天モバイルの通信品質が向上することで、大手3社との競争がさらに激しくなることが予想されます。これは、消費者にとっては料金プランの多様化やサービス品質の向上といった形でメリットとなる可能性があります。
  2. MVNOへの影響:
    楽天モバイルは自社回線を持つMNO(Mobile Network Operator)ですが、その通信品質向上は、他社の回線を借りて事業を展開するMVNO(Mobile Virtual Network Operator)にも影響を与える可能性があります。MVNOは、より競争力のある料金プランやサービスの提供を求められるかもしれません。
  3. 5G展開の加速:
    プラチナバンドは5Gにも活用可能です。楽天モバイルが5Gサービスにプラチナバンドを活用することで、5Gの普及がさらに加速する可能性があります。

課題と展望

 一方で、楽天モバイルにとっては課題も存在します。主な課題としては以下のようなものが挙げられます。

  1. ネットワーク整備の継続:
    プラチナバンドの活用開始は大きな一歩ですが、全国的なカバレッジを実現するためには、引き続き基地局の整備を進める必要があります。
  2. 顧客獲得の加速:
    通信品質の向上を活かし、新規顧客の獲得や既存顧客の維持にどれだけつなげられるかが課題となります。
  3. 収益性の向上:
    楽天モバイルは現在も赤字が続いています。プラチナバンドの活用による効率的なネットワーク運用を、いかに収益性の向上につなげるかが重要です。  しかし、これらの課題を乗り越えることができれば、楽天モバイルは日本のモバイル通信市場において、より強固な地位を築くことができるでしょう。また、同社の成功は、日本の通信市場全体の活性化にもつながる可能性があります。

消費者にとっての意味

 最後に、この動きが一般の消費者にとってどのような意味を持つのか、考えてみましょう。

  1. 通信品質の向上:
    楽天モバイルユーザーにとっては、特に屋内や郊外での通信品質が向上することが期待されます。
  2. 料金競争の可能性:
    各社の競争が激化することで、より魅力的な料金プランが登場する可能性があります。
  3. サービスの多様化:
    通信品質の向上により、より多様なモバイルサービスの登場が期待されます。例えば、高品質な動画ストリーミングや、AR(拡張現実)を活用したサービスなどが、より広いエリアで利用可能になるかもしれません。

 楽天モバイルのプラチナバンド商用サービス開始は、日本のモバイル通信市場における重要な転換点となる可能性を秘めています。この動きが、より良い通信環境と多様なサービスを消費者にもたらし、日本の通信産業全体の発展につながることを期待したいところです。

 今後も、楽天モバイルの動向や、それに対する他社の反応、そして市場全体の変化に注目していく必要があるでしょう。モバイル通信の新時代は、まさに始まったばかりなのです。​​​​​​​​​​​​​​​​

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